産と学で実らせる、梅の「新商品企画プロジェクト」

産と学で実らせる、梅の「新商品企画プロジェクト」
梅花女子大学×中田食品×凸版印刷は産学連携ワークショップを実施し、新商品『梅豆乳鍋つゆ 梅なでしこ鍋』(以下『梅なでしこ鍋』)として結実 させました。大学の知を社会へ還元するためのアクティブラーニングを実践する、梅花女子大学。大学の知を有効活用して新たな市場の創造に期待を かける、中田食品。凸版印刷は「新商品企画」という“タネ”で両者を結び、担当講義の設計と運営、マーケティングの基礎情報提供、そして企画開発 から商品化へ向けての試作や評価の実施、そして『梅なでしこ鍋』製造に至るまで、産学連携の実りをご支援しました。今回の産学連携を担当した 梅花学園法人事務局企画部長の藤原美紀さん、中田食品代表取締役社長の中田吉昭さんと取締役営業部長の岩本幸一さんに、プロジェクトの経緯や凸版印刷との協業についてお話を伺いました。
企業の力と大学の知を結び、新しい実を結ぶ
2015年11月、凸版印刷プロデュースのもと梅花女子大学と中田食品が産学で連携し、ビジネスマネジメント授業の一環として商品企画のワークショップを開始しました。
2016年秋には、学生から提案されたアイデアについて、イオン店頭での販売を視野に、イオンリテーリングを交えた4者で候補を検討。新たに“販売のプロ”の眼が注がれる中、学生によるプレゼンテーションと試食会が行われました。選定された『梅なでしこ鍋』を商品化する方向で各社検討に入り、試作調整を重ねて納得のいく『梅なでしこ鍋』つゆレシピが決定。同時に、梅干し売り場に合わせた新しい形状のパッケージを検討し、細部にまでこだわったパッケージデザインが完成しました。2017年9月27日から北海道、九州、沖縄以外のイオン店舗での発売が実現しました。

梅花女子大学からみた産学連携とTOPPAN

―産学連携への取り組みについて教えてください。
凸版印刷さんとは、グランフロント大阪ナレッジキャピタルの「The Lab. みんなで世界一研究所」で出会いました。初めてコラボレーションした展示『超アナログ!でも3D?のぞきこみシアター』で、2015年第2回ナレッジ・イノベーション・アワードのグランプリを受賞したんです。それがご縁で、「中田食品さんが抱えている課題を授業で一緒に考えてみませんか」とお誘いいただいて。
商品化までを想定していたわけではなくて、「なにか面白いものが生まれたらいいですね」と柔軟なスタートでした。従来型の産学連携だと、薬品会社と薬学部といった同じ研究分野で共同開発することが多かったと思うんです。梅花女子大学では、異分野の学生ならではの感性や新しい発想をもって企業様と一緒に考えさせていただくという、これまでとはひと味違う産学連携を目指そうという方向で取り組んでいます。学生もそうですし、企業様もジャンルが遠いほど「そんなアイデアがあるなんて思いもつかなかった!」と、お互いに発見や驚きがあるのが産学連携の醍醐味ではないでしょうか。

―学生たちにどのような学びがありましたか?
授業ではまず、中田食品さんから学生たちへオリエンテーションを行っていただきました。
梅干しの魅力を知ることから始まり、冬場は意外と売れないことや若い人はあまり食べないといった実態を把握します。凸版印刷さんにはコンセプトの立案や商品パッケージ、プレゼンテーションなどを教えていただきました。学んだことのない分野でかつ企業の方と話し合う機会はあまりないので、みんな最初はおとなしいです。ところが、調べてアイデアを出していくことを2回、3回と繰り返していくうちにディスカッションが進み、「じゃあこんなアイデアはどう?」とか、やってみることでどんどん面白さを感じてくるようですね。商品のアイデアができたら終わりではなくて、アレンジレシピの開発までやらせてもらったり。店頭販売にも立たせていただきました。自分たちが考えたアイデアに対し、お客様からダイレクトに意見を聞けるのが励みになっています。実践的に学びながら、店頭でプレゼンテーションや、マーケティングまで学べるまさに実践的な学びによる好循環が生まれています。当初は想定していなかったことが起きるオーダーメイドな産学連携だから面白いです。

―凸版印刷と協業してみて、いかがでしたか?
一般的に、産学連携ではゴールを設定することからスタートすると思うのですが、凸版印刷さんとはまず何かやってみようというところからコラボレーションが生まれたんです。ゴールありきの堅苦しい連携ではなくて、一緒に何かをやる仲間のような形で取り組めたのが今回の成果につながったのではないでしょうか。
とても柔軟に対応してもらっていますし、これを機に今後も新しい発想でご一緒させていただきたいですね。学生たちにとっても、実際に企業でプレゼンテーションしている方の視点で教えてくださったということで、大学の授業にプラスαを感じてもらえました。


中田食品からみた産学連携とTOPPAN

―学生たちと取り組んでみて、いかがでしたか?
梅業界として、お米離れが進んでいくなか現状のままでは将来的に需要が減っていくという危機感を持っています。消費者層としては若い方からご年配の方まで幅広く食べてもらえているんですが、購買層としては中高年に偏っている。若い方が自分たちで買って、消費してもらえるようにしていかなければという課題がありました。同時に、食事の中でどのような梅干しの新しい利用方法があるのかを探っていきたかった。そういった点で「若い方の感性と好みでレシピ提案から商品開発につなけていけないか」と企画をお願いしたんです。学生たちには、商品化をする企画担当者の気持ちで物事を考えるのではなくて、「消費者として自分たちが食べたいもの」という視点で考えてもらったんです。5班に分かれて13のアイデアを出してもらい、そこから5つのアイデアに絞っていきました。若い方の、食材と食材を組み合わせる斬新な発想力には、正直びっくりしましたね。たとえば豆乳と梅干しですが、酸とアルカリは反発しあうのでプロの発想からはなかなか出てきません。
『梅なでしこ鍋』は、若い方の“おいしさへの熱意”から生まれた商品だといえるでしょう。

―産学連携の意義はどんなところにありますか?
梅干しは夏に需要期を迎え、秋冬は売上げが落ちてくる時期なんです。それに、若者がお米を食べなくなっている。今回の鍋つゆをきっかけに梅の需要喚起につながればという点で、今回の4者による連携は大きな意義があると考えています。まずはイオングループ企業さんで先行販売という形で、この秋冬はいろいろ販促を打ちながら、『梅なでしこ鍋』が市場でどういう認められ方をするのかを確かめる時期になります。うまく売れていけば、我々にとっては新たな市場が広がっていきますので、そこから先は凸版印刷さん、梅花女子大学さん、イオンさんと相談しながら来期に向けて取り組んでいくことになります。
できるだけ息の長い商品にしていきたいですし、前向きに第二弾、第三弾とやっていければ最高ですね。

―凸版印刷との協業についてお聞かせください。
凸版印刷さんには梅花女子大学さんと産学連携でつないでいただき、授業、パッケージ提案、最終的に鍋つゆの充填先までトータルコーディネートしてもらえました。凸版印刷さんにお声がけすればデザインから包装、充填先まで一貫して取りまとめていただけるのが大きな魅力ですね。ドリンクの方でもお世話になっているんですよ。我々は和歌山の地場産業ですので、梅干しのことで頭が一杯です。その他の新たな取り組みや商品づくりをするにあたって、凸版印刷さんは大変ありがたい存在です。これからも最先端のご提案や、斬新なアドバイスをいただけるパートナーであり続けてほしいですね。


TOPPAN担当者から
単なる商品開発にとどまらない産学連携の可能性が拓かれた
今回のコラボレーションでは、学生たちの若い発想力を商品開発に活かし、新たな市場開拓をトータルに支援させていただきました。商品企画力やマーケティング力をはじめとした凸版印刷の幅広いリソースを活用し、従来の産学連携の枠を超えたイノベーションにつなげることができました。
「梅干し」は、女子大生の視点から見ると受容性の高い商品ではありません。だからこそ、次世代に継承するべく「日本の食文化を再発見するワークショップ」を目指しました。グループディスカッションや体験型の授業を通して、梅花女子大学様、中田食品様そして凸版印刷それぞれのブランド力を学生の方々に認知していただけるきっかけになりました。また、商品企画に携わる様々な業務領域に実学として接してもらうことで、キャリア教育を支援し社会貢献に繋がるプロジェクトになったと思います。さらに、梅干しの新たな需要の創造という課題に対し、大人の発想からは決して生まれない説得力のある商品開発が実現しました。
一社で商品をつくって完結するのではなく、お客様とリソースを共有しながら新しい価値を共創することで、新市場の開拓と社会課題の解決につながる。そこに、今後の可能性を感じています。

学校法人 梅花学園
企画部長・藤原美紀さん

2018年には創立140年を迎える梅花学園で、企画と広報を総合的に担当。社会とのさまざまな連携による「学び」に力を入れ、「チャレンジ&エレガンス」をあわせもつ自立した女性の育成のために活動。
中田食品株式会社
代表取締役社長・中田吉昭さん
取締役営業部長・岩本幸一さん

中田食品は、明治30年創業の和歌山県の老舗梅干しメーカー。いつの時代にも「日本の味・心の味」を守り伝えながら、新たな商品の企画開発を通して市場の開拓にも取り組む。特に若い女性をターゲットに、「梅なでしこ」ブランドを産学連携商品「鍋つゆ」で訴求し、新たなファン層の獲得に挑む。
凸版印刷株式会社 関西TIC本部 商品企画チーム
クリエイティブディレクター/臨床美術士 山本小百合さん

入社直後2年間は、主に定性調査に携わる。
以降、商品企画部門で食品・アルコール飲料・医薬系の商品企画ディレクションに従事。最近は産学連携企画にも注力。